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疾患別連携システム(前立腺がん)

前立腺がん連携パスについて

近年前立腺がん患者数は飛躍的に増加しています。現在の試算では、年間の患者数は約9万人、そのうち約12000人ががんのため亡くなられています(2015年)。
PSA検診の普及とともに、今後もかなりの増患が予想される疾患の一つとなっております。

前立腺がん治療に関しては、手術療法、抗がん剤やホルモン剤を用いた化学療法ともに近年目覚ましい発達を遂げています。特に手術療法(前立腺全摘出術)に関しては、従来の切開手術に代わり腹腔鏡による前立腺摘出術に移行し、手術侵襲に飛躍的な軽減が見られ、さらにダビンチという手術ロボットを用いたロボット手術技術が開発され、一層の低侵襲手術が可能になってきました。
現在静岡市内では、静岡県立総合病院、静岡市立静岡病院泌尿器科にこのダビンチというロボットが導入され、現在まで多くの前立腺がん患者さまの治療に役立てられています。
ほとんどの前立腺がんの方において、前立腺全摘出術を受けるケースというのは手術療法そのものが治療の終着点であることが多く、術後の治療成績(主に5年生存率;術後5年後に生存している割合)は全摘出手術を受けた状態では、純粋にがんによる生存率に関していえばほぼ100%と大変予後のよい疾患と考えられています。

治療成績の良好な結果と、非常に低侵襲になった手術(20年ほど前までは、前立腺全摘出はかなりリスクのある治療法でした)とあわせて、今後も手術治療によって治癒可能な患者様の数はさらに増えていくことが予想されます。

前述のように手術治療は治療としての終着点になりえますが、手術後もやはり病院への通院は必要となります。
がんの治療が手術を受けることで終了になる事もあれば、中には手術後にさらにがん再発を抑制するためのホルモン剤投与療法を受ける必要のある方、放射線治療を受けなくてはいけない方がありますが、非常に少ないながら、がんの再発や、手術にともなっておこる種々の症状、不調、特に排尿障害やPSAという血液検査項目での異常(手術後はいったん低下しますが、再発とともに再上昇してきます)などが見られるからです。

手術後の経過観察の内容としては、手術後早期(術後1から2年ほど)においては、手術担当となったドクターが基本的にお世話をさせていただくこととなります(患者様は総合病院への定期受診が必要となります)。
手術後の経過、手術後の追加加療の経過も良好で、安定している状態になると、総合病院への定期受診でも、診察内容はPSA採血、尿検査、血液検査が中心となり、CTなどの検査は1年に1回程度もしくは行わずとも十分となってきます。

個々の患者様の手術状況にもよりますが、最近の前立腺がん治療後の経過で最も重要な要因はPSAの変動で、PSAの信頼度は極めて高く、CTや、MRIなどの画像検査に勝ると判断されています。

したがって、“がん”とは言いながら、実際の経過観察の重要なポイントはPSAの変動に尽きるといえます。

今後、前立腺がんの患者様の増加を念頭に置いて、初期治療後の安定期での総合病院への受診時間、通院の手間などを考慮すると、患者様や、総合病院勤務のドクターのいくばくかの負担となる事が想像されます。
実際、多くの前立腺がん治療を受けられる患者様たちは、それぞれすでに近隣にかかりつけ医がある方が多く、前述のように安定期の診療内容(PSA検査)も総合病院受診で行うほど複雑ではないといえます。

そこで市内各総合病院の泌尿器科ドクター、静岡市泌尿器科医会、静岡市清水医師会、静岡市静岡医師会の地域連携医療委員会では、通院される患者様ご負担の軽減、病診連携の充実を図るためこの件を協議させていただき、今回の前立腺がん連携パスの発案にいたり、平成29年7月より稼働開始をいたしました。

このパスの一つの特徴としては、ご登録をいただいた患者様は、基本的に総合病院の泌尿器科への通院はせず、従来のかかりつけ医への通院、または登録された市内近隣の泌尿器科医院へ通院していただき、手術をうけた総合病院泌尿器科に再度受診していただくのは、規定値を超えるPSAの変動(上昇)があった時、または泌尿器科的な症状(手術や精密検査の必要な著明な排尿障害、膀胱疾患など)があった時のみ、ということで、基本的には総合病院泌尿器科への再診は不要となる一方向のパスである、ということです。
もう一つの特徴は、総合病院とかかりつけ医の間に泌尿器科開業医を間に挟んでパスが成立しているということです。
前立腺がん治療後の方に置かれては、もちろんがんそのものの経過に加え、膀胱機能障害などからの排尿にまつわる種々の泌尿器科症状がみられる様になる事があります。
がんの再発と異なるため、開業医の診療においては、がん治療を行った総合病院に紹介するほどではないが・・専門医でないための不十分な治療をするわけにもいかず・・と、どの領域の医師も経験する悩みが生じます。
こういった際に、まず近隣の泌尿器科開業医に相談する、ということで、可能な限り総合病院受診回数を減少させることも患者様の負担軽減に役立つという体制を整えていることになります。

現在、このパスに参加している泌尿器科専門の開業医院は、旧静岡市内で7件、旧清水市内で4件の登録があり、静岡市全域をほぼカバーできる状況にあります。

また、一方向のパス(総合病院受診は不要)でありながら、決して総合病院との縁が切れるわけではなく、パスにのっとっている以上いつでも希望時、または何かの状況変化のあるときは手術先の総合病院への受診は可能である事も明記されています。

疾患の特徴をとらえて構築したこのネットワークの利用で、患者様におかれては、PSA監視のための総合病院への定期受診、という多少手間のかかるシステムから解放されることになります。

もちろん患者さまにおかれましては、主治医の提案、相談から各総合病院の地域連携医療室において、総合病院受診での定期通院、または従来のかかりつけ医、または近隣のパス登録医院、泌尿器科開業医をご選択いただけるようになっており、その後の経過観察を継続していく形となります。

ご担当いただく開業医のかかりつけ医の先生方や、泌尿器科開業医は、あらかじめ決められたペース(主に1から3か月に1回)でのPSA採血と変動(事前に総合病院主治医の設定する決められた数値以上に上昇など)の判断を行っていく事となります。

このように、現在静岡市静岡医師会、静岡市清水医師会、静岡市泌尿器科医会は今後も増加してくると思われる前立腺がんの全摘手術後の患者様の健康維持に少しでも貢献させていただけるように、今後も病院、診療所、診療所同士の間の連携を強めていき、一人でも多くの患者様の安心につながるように役立てたいと考えております。
まだ開始して間もないため、今後もよりよい連携を目指し安定した環境を整えていきます。

ぜひ、患者様のご理解、ご協力を頂きつつ、ご安心して過ごしていただけるように努力していきたいと考えています。
各総合病院の地域連携医療室で情報提供しておりますので、ぜひご利用いただきたいと考えています。

図1

参加専門医病院

静岡県立総合病院、静岡市立静岡病院、静岡赤十字病院、静岡済生会総合病院

参加するかかりつけ医

135人

登録患者数

226人(2020年3月時点)

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