慢性頭痛の医療連携
頭痛というと、くも膜下出血などの緊急性を要する頭痛を思い浮かべる方が多いかと思います。これらの急性発症の頭痛に対して適切な治療を提供することは、重要なことでありまた当然求められることですが、普段から頭痛に苦しんでいる片頭痛などの慢性頭痛の患者が、多数存在しているのも間違いありません。
慢性頭痛の中でも、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛が患者数の多い頭痛としてあげられるかと思います。これら3つの頭痛の人口10万人あたりの有病率は、22.0%、8.4%、0.4%程度ではないかとされています。これを静岡市の人口を約70万人として計算すると、静岡市には、緊張型頭痛15.4万人、片頭痛5.9万人、群発頭痛0.3万人の潜在患者が存在すると考えられます。また片頭痛に関してですが、定期的に医療機関を受診しているのはわずか2.7%、時々受診12.3%、過去に通院したことがあるは15.6%、驚くことに、残りの69.4%は一度も医療機関を受診したことがない、というデータもありました。このように、慢性頭痛の患者は、多数存在しているにも関わらず、適切な医療を受けていないのが現実かと思われます。しかしながら、静岡市内の総合病院の神経内科ならびに脳神経外科、頭痛診療が可能な診療所だけでは、これら潜在患者の需要に対応できないというのが、残念ながら現実です。
このような状況のもと、静岡赤十字病院神経内科今井先生の提案で、慢性頭痛で苦しんでいる方を1人でも減らせるように、とのコンセプトのもとに、一般の診療所の先生にも協力していただき、この病診連携システムがスタートしました。総合病院、一般診療所、さらに一般診療所のなかでも、頭痛診療が可能な診療所を慢性頭痛連携専門医診療所として、この3者が協力して、慢性頭痛の治療に対応していくのが、この病診連携システムです。平成26年7月31日に第一回目の会合が開催され、その後も毎年1回講演会を開催、頭痛診療、診断の技術向上に努めながら、今後もより優れたシステムの構築を目指しています。
慢性頭痛医療連携の役割分担
(1)総合病院
一般診療所および慢性頭痛連携専門医診療所から紹介いただいた頭痛患者さんの診療、ならびにこれら患者さんの状態が安定した際には、紹介いただいた診療所への戻し紹介。
外来にて経過観察している頭痛患者さんで、状態が安定している方については、慢性頭痛連携専門医診療所等への積極的な逆紹介。
(2)慢性頭痛連携専門医診療所
一般診療所から紹介いただいた頭痛患者さんの診療、ならびにこれら患者さんが安定した際には、紹介いただいた診療所への戻し紹介。(ただし、総合病院での診断、診療が必要と判断される患者さんについては、総合病院へ紹介の後、総合病院にて加療していただくことに。)
(3)一般診療所
日常診療において、頭痛の治療および診療に難渋する患者さんを、総合病院あるいは慢性頭痛連携専門医診療所への紹介。
現在登録している医療機関
(1)総合病院
静岡県立総合病院
静岡赤十字病院
静岡市立清水病院
(2)慢性頭痛連携専門医診療所
葵区 9施設
駿河区 6施設
清水区 5施設