心房細動の病診連携
1.心房細動とは
心臓のリズムが不整になったり、早くなったり、遅くなったりする心臓の疾患群がありますが、総じて不整脈と言います。命を危険に曝す恐ろしい不整脈から、治療が不要な安全な不整脈までいろいろなタイプが存在します。
その中に、絶対なりたくない疾患である脳梗塞の原因になる不整脈があります。ひとたび脳梗塞になれば生活は破壊され、将来に暗雲が立ち込めます。その不整脈がこの心房細動です。ある日突然、心房の内部に電気の渦が数個発生して本来の電気の流れを阻害します。鳴門海峡の渦を観光船で通過するような状態です。電気の渦から流れる電気刺激により心臓の拍動は支配され、脈拍がばらばらになります。規則性はまったくありません。心房が収縮しなくなるため、心房の隅にある心耳という場所に血栓ができます。これが外れて飛んで行き、脳の血管を閉塞して脳梗塞を発症します。それが起きなければ、多少動悸は感じるかもしれませんが生活に支障はなく、命の危険もないので、放置されていることがしばしば起きています。職場健診などで診断されて病気を知ることがよくあります。このように見過ごされやすい疾患であり、脳梗塞を発症してから診断がつくことがないように速やかに診断して、適切な治療を受けていただくためにこの病診連携を行っています。
2.心房細動病診連携の歴史と新しい試み
この病診連携システムの始まりは平成19年のことです。静岡医師会と静岡市立静岡病院との間で協議を重ね4月よりスタートしました。循環器内科以外の先生方にも参加をいただき、順調に運営されています。
静岡市立静岡病院以外の総合病院とも同じような連携を構築したいと希望が多く、本年度に県立総合病院と静岡済生会総合病院の先生と協議をして、3病院共通のパスを作りました。H30年1月よりこの新しい心房細動病診連携を開始します。
3.システムの概要
未治療の心房細動を見つけたら、循環器内科を専門としない先生でも速やかに適切な治療を提供できるシステムです。専門の先生は自分の治療の流れの中で追加治療をお願いできます。この連携により静岡市において心房細動から脳梗塞を起こす患者さんを減らすことが目標です。病院が提供できる治療は投薬のアドバイス、電気ショックによる停止、アブレーション治療による根治です。合併症の発生時も速やかに対応してもらえます。
診療所と病院が連携して患者さんを治療していく循環型連携型システムです。
4.システム運用の実際
診療所で未治療の心房細動の患者さんを見つけたら、静岡市静岡医師会病診連携統一様式の黄色の紹介状で3つの総合病院のうちのどこかに紹介してください。紹介するタイミングは診断後直ちに、抗凝固療法をしてから、抗不整脈治療をしてからなど診療所の治療方針に合わせて行います。
病院では適切な治療を行い、安定した状態で心房細動病診連携パスを発行して診療所に戻します。次回の受診を半年、1年、2年にするかは病院の判断で決まります。診療所はパスに沿って検査、治療を行い、時期が来たら紹介状にパスをつけて病院に紹介します。
病院に通院中で安定した患者さんを診療所に逆紹介する場合は紹介状と心房細動病診連携パスをつけて紹介します。その後は同じです。このように循環型連携システムに乗って協力して治療を継続します。
参加専門医病院
静岡市立静岡病院、静岡県立総合病院、静岡済生会総合病院、静岡赤十字病院
参加かかりつけ医
158医療機関
登録患者数
2,570人(2024年3月末時点)