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疾患別連携システム(脳卒中)

イーツーネット脳卒中医療連携システム

1.連携システム発足までの経緯

平成13年、静岡市静岡医師会と静岡市立静岡病院との間で、病院が紹介された患者を紹介元の診療所に戻し、その後は診療所が日常診療をして、定期的に病院へ紹介して検査等専門的診療を行うという、診療所医師と病院医師による機能を分担した二人主治医制の病診連携体制であるイーツーネット病診連携システムが構築されました。しかし、このシステムにおいては、診療所からの紹介が増えたが病院からの逆紹介が増えない、病院が紹介元に患者さんを戻さないことがある、診療所医師が病院への定期紹介を忘れることがある、病院の前任医師より新任医師にこのシステムが申し送りされないなど、医師同士の信頼関係や共通の理念を軸とした病診連携ゆえに起こりうる課題が生じました。

これらの課題を解決するために、静岡医師会病診連携協議会は、疾患別連携システムの地域連携クリティカルパスを作成し、さらに病院の病診連携室がこれらのシステムをサポートする、新しいスタイルの疾患別連携システムの構築を模索しました。

平成18年5月より、静岡県立総合病院神経内科との間で脳卒中発症後の病診連携について協議を重ね、平成18年9月に「脳卒中発症者のためのネットワーク」が構築され、運用が開始されました。その直後に静岡赤十字病院から連携構築の依頼があり、平成19年1月に静岡赤十字病院との間でも同様の連携システムが構築された。この時、脳卒中発症予防の向上を目指した「脳卒中リスク者のためのネットワーク」を新たに構築しました。その後、3月には静岡済生会総合病院と、5月には静岡厚生病院と、7月には静岡市立静岡病院との間で順次ネットワークが構築されていきました。静岡市立静岡病院との「脳卒中発症者のためのネットワーク」では、リハビリの専門知識のない医師でも実施できる独自の日常生活動作(ADL)評価法「静岡脳卒中機能スケール(SNS)」を取り入れ、廃用や再発の客観的早期発見の向上を目指しました。また、静岡赤十字病院との連携構築の際に、静岡リハビリテーション病院、静清リハビリテーション病院、静岡市立清水病院回復期リハビリ病棟の3つの回復期リハビリテーション病院も連携システムに参加し、急性期病院回復期病院→診療所という連携が確立しました。静岡厚生病院との連携が構築された際に、新設された静岡厚生病院回復期リハビリ病棟も連携システムに参加しました。
 上記のような経過により、旧静岡市内5つの公的病院との間でそれぞれの病院の実情に合わせた形の脳卒中病診連携システムが構築されましが、登録診療所の医師からは5つの病院のシステムを統一してほしいという要望が少なからず出てきました。一方病院の医師からは、清水区の患者も登録したいため、清水区医師会所属の診療所の医師にもシステムを開放してほしいという要望が出てきました。また、回復期リハビリ病院として参加していた静岡市立清水病院からは、清水医師会の診療所と連携を視野に入れて、急性期病院としての参加の希望が出されました。
この問題を解決するために、平成19年9月、静岡医師会は清水医師会や旧静岡市、旧清水市にある公的6急性期病院の担当医師とともに改めて統一システム構築に向けての話し合いを行い、統一システムの構築がなされました。

平成19年10月、第1回イーツーネット脳卒中医療連携総会が開催され、連携システムの概要が説明され、イーツーネット脳卒中地域連携システムの運用が開始されました。

2.システムの概要・特徴について

【目的】

診療所、急性期病院、リハビリ病院、病診連携部門(病院事務)、イーツーネット医療連携協議会が協力し、それぞれの機能を分担し、連携した診療を行うことにより、患者さんにより良い医療とQOLを提供することを目的としています。

【基本的な事項】

以下の4項目を基本事項としています。
① 原則として、病院と診療所間で共通のシステムを用いたイーツーネットによる循環型連携システム
・病院は、登録患者の状態に応じて、定期的なチェックを行い、診療所は、登録患者を各病院の主治医と連携して、日常診療を行います。
② 登録医制(手挙げ方式)
・このシステムに賛同した医療機関が登録医療機関となり、このネットワークに参加します。また、このシステムで紹介および逆紹介された患者は、連携登録患者となります。(口頭による患者の同意を要することになっています。)
③ 病診連携室(地域医療支援室)とネットワークによる定期受診の管理
・登録病院の病診連携担当部署において、システム登録患者の次回病院受診予定の
約2か月前までに、診療所へFAXにて定期受診時期が近いことを知らせることになっています。
・静岡市静岡医師会事務局に、登録患者の動向を毎月報告することになっています。
④ 連携安心カードの発行

3.運用の実際について

【脳卒中発症者のためのネットワーク】

脳卒中発症者のためのネットワークの概略は[図1~図8]のとおりです。急性期病院から、リハビリ病院へ転院あるいは診療所に戻る場合、またリハビリ病院から診療所に戻る場合にも、退院調整FAXであらかじめかかりつけ医に意向を聞くことになっています。そして実際に患者さんが転院するときには、紹介状と連携パス[図11]を持って転院します。

急性期病院あるいはリハビリ病院を退院する際は、SNSを用いてADL評価を行い、診療所医師は定期的に評価をし、定期受診の際は、紹介状とともにSNS経過表で病院に情報を提供します。また、SNSで2点以上の低下を増悪と考え、ADLの増悪が認められた場合も急性期病院に紹介することになっています。

【脳卒中リスク者のためのネットワーク】

脳卒中リスク者のためのネットワークの概略は[図9、10]のとおりです。かかりつけの患者さんに、リスクネット連絡表にある脳卒中を疑う神経症状もしくはスコア表で2点以上を認めた場合、診療所の医師が紹介状とともに急性期病院へ紹介します。急性期病院は、MRA,などの検査を行ってリスク評価を行い、診療上のアドバイスを付け加えて、連携パスで報告し、連携診療が開始されます。

【システム運営に関して】

年2回の世話人会と協議会、年1~2回の講演会と情報交換会を開催し、システム運営の確認、知識の向上と共有、そして関係者の親睦を深めています。

4.連携システムの登録患者数などの実績について

令和4年3月末現在の参加医療機関は、急性期病院が静岡県立総合病院、静岡赤十字病院、静岡済生会総合病院、静岡市立静岡病院、静岡市立清水病院の5病院、回復期リハ病院が静岡リハビリ病院、静清リハビリ病院、静岡厚生病院、静岡市立清水病院、静岡徳洲会病院の5病院、静岡医師会診療所と医師が140件、157人、清水医師会診療所と医師が51件、56人、非会員診療所が1件、1名となっています。
平成19年11月に運用を開始してから順調に登録患者は増えています。[図12]

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